「つまり、傷も痛みも不要だから、そのような動きを封じていると?」
「そうなるね」
「馬鹿らしい」

巻き付く紐に眉を潜め男は吐き捨てるように言う。
閉塞感しか与えない証など欲しくはない。
だというのに彼は、何故そんなことをいうのだろうか。
彼とてこの閉塞感を感じている筈なのに。
そう思って隣を見やり、ようやく男は気がついた。

「お前、それは一体」

どういうことだ、と問いかける男に、彼はにこりと微笑んだ。

「そうだね、やっと気がついた」
「何を言って居るんだ?それよりも、何故、どうして」

続く言葉を紡ぐべく口を開くも、ひゅう、と掠れた音しか出ない。
喉を通り舌を震わせ発される筈の声は、胸の辺りでつかえて出てこない。
問いかけたいのにそれができない。
知りたいのに、知る術がない。
男はごくりと唾を飲み込む。
彼は上下に動く喉を見て、おかしそうに笑ってみせた。

「私は君のように雁字搦めではない。それは、見ればわかるだろう」

ほら、と体を男に向ける。

…なるほど、彼のいう通り。
その姿は男のように雁字搦めではなく、とても身軽なものだった。
唯一彼を縛るのは、男と彼を繋ぐ件の紐くらいなものである。

「そんな筈はない。同じように括られていた筈だ。お前、いつの間に解いたのだ」